会計ソフト経理・法律に関する情報税理士 田中先生のワンポイントアドバイス

令和6年度税制改正後の「中小企業法人向け賃上げ促進税制」2/2回

掲載日2024年11月30日

前回に続いて、令和6年度税制改正後の中小企業向けの「賃上げ促進税制」のポイントを解説していきます。

適用要件と税額控除額(2/2)

(1)上乗せ要件 

上乗せ要件に該当すれば、通常要件よりもさらに控除率は高くなります。上乗せ要件と税額控除額は次のとおりです。

  • 上乗せ要件①雇用者給与等支給額2.5%増加要件
    雇用者給与等支給額が前年度と比較し、2.5%以上増加していること
  • 上乗せ要件②教育訓練費増加要件
    教育訓練費の額が前年度と比較し、5%以上増加していること「教育訓練費の増加」により税額控除を受けるためには、教育訓練の実施時期、実施内容、期間、受講者などの情報を記載した書類を作成し、適切に保管しておく必要があります。
  • 上乗せ要件③「くるみん」以上または「えるぼし二段階目」以上の認定要件子育てサポート企業として「くるみん」認定を受けたり、女性の活躍を推進している優良な企業として「えるぼし二段階目」以上の認定を受けていること

(2)税額控除額

上乗せ要件①を満たすと15%、上乗せ要件②を満たすと10%、上乗せ要件③を満たすと5%の上乗せ額が法人税額から控除できます。

上乗せは併用が可能なため、通常要件も合わせれば最大で45%の控除が受けられることになります。ただし、税額控除額は法人税額の20%が上限と決められています。

賃上げ促進税制のメリット

賃上げ促進税制のメリットは多岐にわたりますが、主なメリットを4点ご紹介いたします。

1.賃上げ負担の軽減

通常であれば、企業にとって従業員全体の賃上げは経済的に大きな負担となりますが、賃上げ促進税制を活用すれば一定額の税額控除を受けられるため、賃上げに伴う経済的な負担を軽減できます。

2.節税効果

賃上げ促進税制は、法人税からの税額控除制度であるため納税する法人税額が少なくなる、節税効果があります。なお、賃上げを実施した年度に赤字が発生した場合など、税額控除額のうち、控除しきれない金額が発生した場合は、その控除しきれない金額は翌年度以降5年間にわたって繰越し、将来発生する法人税から控除できます。

3.従業員の能力向上

社員研修を実施して上乗せ要件である「教育訓練費」を増加させる場合、単に税額控除額が増えるだけでなく従業員の能力向上という大きなメリットが見逃せません。社員の能力向上は必ず将来の企業成長につながります。

4.事前の認定や届け出は不要

賃上げ促進税制を活用するにあたり、事前の認定や届け出などの必要はありません。しかし、賃上げ促進税制の適用を受けるためには、法人税の申告時、確定申告書にて「税額控除の対象となる金額を記載した書類」、「金額の計算に関する明細書」他を添付する必要があるので注意が必要です。

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